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なんとなく読書感想文

小説:実用書:漫画=1:1:1。活字を読んでいるだけでそれなりに楽しい、というおめでたい頭の持ち主なのであまり書評的なことはしません。ただの感想文。流行にはついていけてません。

“平地人を戦慄せしめよ”

図説 地図とあらすじでわかる!遠野物語

大学の学科の関係上、講義で「日本民俗学の創始者・柳田國男」の名前は何回もきいていたのですが、ついにその著作を読むこともなく・・・不真面目な学生生活でしたね。
そんなわけで、今さら感もありますが、柳田國男の代表作・遠野物語の解説書を。

 

遠野物語とは

遠野物語とは、岩手県遠野地方の伝承を収録した説話集です。

遠野出身の若手作家・佐々木喜善から聞き書きしたものをまとめ、柳田自身が明治43年に自費出版しました。

収められている説話の内容は、家の神、山の神、天狗、山男、河童、座敷童、伝統行事 etc.  本当に様々です。

遠野地方は、山に囲まれた盆地で都市化の影響を受けにくかったこともあり、古くから伝わる文化や伝承が蓄積されやすい土地柄でした。

一方、遠野地方は交通の要衝でもあったため、出入りする人々により様々な伝承が持ち込まれました。

そのため、近代化が進んだ明治以降も「昔ながら」な風習や神秘的な心象風景が残存し、柳田の心を魅了したのです。

“平地人を戦慄せしめよ”

これは『遠野物語』序文での柳田の言葉です。

近代化していく日本(の都会)に住む人々に、地方に残る伝統的な日本の心象風景を知らしめよう。

という、柳田の意気込みを表しているらしいのですが。

「戦慄せしめよ」ってすごいですよね。

明治の人には、ひっかかりなく感じられるのでしょうか。

なんだか「戦慄」なんていうと、「お前(平地人)らは忘れてしまっても、山の神や様々な化け物は確かに生きていて、お前らの事を見ているんだぞ・・・」って言われている感じがします。

まあ、私の妄想ですが。

 

気になった説話

マヨイガ
マヨイガは山中に忽然と現れ、訪れたものに服をもたらす無人の豪邸です。
山で囲まれた土地ならではの伝説ですね。
この家に行き当たった者は、家の中にあるものを持ち出せば裕福になれるそうで。
ただし、「マヨイガに行こう!」という心づもりだと、たどりつけないそうです。
無欲でなければ与えられない、ということですね。
これは「人がたやすく行き来できない異郷」ということで、竜宮城の山版ともとれます。
もし竜宮城とマヨイガどちらかに行けるとしたら、マヨイガに行きたいですね。
まず、山中の豪邸というところに浪漫を感じますし、私は人づきあいが苦手なので竜宮城の接待などはご遠慮したいところです。
しかも現代一般的伝わっている「浦島太郎」から考えると、竜宮城に居る一時の楽しさばかりで、帰ってから得るものがなさそうですよね。
たしか浦島は玉手箱をもらってあけて、おじいさんになってしまって、しかも故郷の時間の流れが竜宮城と違い知人はみな死んでいた。みたいな感じでしたもんね?良いことなしです。
玉手箱を開けなければハピエン展開だったのでしょうか?
まあ、しかしこんな損得ばかり考えている人間の前に、マヨイガは現れないのでしょうね。笑
 
河童

豪家の娘が河童と密通して、その子を産んだ。

産まれた子は切り刻んで土中に埋めた。

説話の中にはこんな話があるそうです。

この話は、豪家の当主の名前までわかっていたそう。

河童の子を孕んだという言い伝えからは、この豪家の娘に実際になんらかの不義密通があったのではないか、と推測できます。

田舎で起きたスキャンダルを、河童が登場する話にすることで、関係者の対面が傷つかないようにごまかした・・・。

このような話は、以前読んだ『日本化け物史講座』にも書いてありました。

 

san-reading.hatenablog.com

 

記事に載せた「河童の水利工事」なども河童が事実をうやむやにするための材料とされています。

化け物は事実を隠すために体よくつかわれたりすることが、多いのかもしれませんね。

 

遠野物語』自体を読んでみたい

本書は「図説」とかいてあるだけあって、図や評が多くとり上げられており、非常に易しかったです。

遠野物語』は文学性も高く評価されているそうで、三島由紀夫も評価したとか。

青空文庫で新字新仮名版がダウンロードできるので、そちらもいつか読んでみたいです。

 
 序章  『遠野物語』とは何か
第一章 神々と政令
第二章 霊魂と妖怪
第三章 動物と人間
第四章 伝承と年中行事
終章  柳田國男の生涯